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中国人研修生が日本で激減、その理由を広東省の町工場で考えた

2016/09/22

しばらく前のことですが、自動車用LEDを開発・販売している「LEDのくまてつ屋」さんの広東省出張に同行させていただき、現地の町工場の社長さんたちから様々なお話しを聞いてきました。話を聞いていて、ふと思い出したのが、「最近、日本の中国人研修生が激減している」という話です。

中国の町工場を見学してきた

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今年のはじめ頃、広東省某市の町工場を見学してきました。ここは各種のLEDランプを開発・製造している、従業員数十名の小さな町工場ですが、技術力・生産管理ともに高い水準で運営されているのが印象的でした。

工場の社長さんのご好意で、地元の社長会の研修も少し見学させていただきました。人事管理の研修だったようで、社長さんたちは真剣に講師の言葉を聞き、熱心にメモをとっていました。

地元の社長さんたちとの昼食会

研修の後は近くの隠れ家レストラン私房菜)でランチのようです。

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「せっかく来たんだからあなたたちも一緒に」と、連れて行っていただけることに。

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メニューのない、地元社長御用達の隠れ家レストランの料理は、どれも素朴な味わいながらも、素材の味が上手く引き出されていて、中国の家庭料理は油っこくて塩っ辛いという私のこれまでのイメージを覆すものでした。

人件費の高騰に悩む中国社長たち

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そこで聞いたのが、広東省のこのエリアではどの会社も、人件費の高騰と人材の確保に苦労しているという話です。

聞いていると、例えばある社長さんの会社では、月給3500元に加えて社員寮(食事付き)と各種税金・積立金を会社負担にして、やっと求人に応募があるのだとか。

月給3500円は、ざっと1元19円として換算すると、約6万7千円です。家賃・税金・保険などは会社負担なので、この6万7千円はまるまる手元に残ることになります。

さらには、少しでも給料の高い会社が見つかると、あっという間に転職してしまうため、本当は有望株の社員にはもっと給料を出してあげたいのだけど、そうすると他の社員から不満が上がるので難しい。

そうこうしているうちに、有望株の社員は競合他社に引きぬかれてしまう、人件費もこのまま上がり続けるのなら、発展途上国への移転を考えなくてはいけない。

そんなお話しをされていました。

関連記事:中国南部の地方都市のレストランの待遇は月給2800元(約53000円)、家賃・税金・保険は会社負担

広東省の工員の給料は日本の中国人実習生と変わらない?

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そこで思い出したのが、私がボランティアで交流している日本の中国人研修生(実習生)の待遇。

私は最近まで、中国人実習生(研修生)の生活支援のボランティアに15年ほど携わってきました。

外国人実習生制度に多くの問題点があることはよく知られていますが、どんな事情であれ、日本に来てくれた彼らに、少しでも寄り添うことができればと、草の根レベルの国際交流を続けてきました。

私が主に関わってきたのは、「団体監理型」と言われる、地元の「◯◯協同組合」が一括して実習生を受け入れて、町工場や農場に割り当てるタイプの実習生です。

外国人実習生には「企業単独型」と「団体監理型」があり、特に「団体監理型」は待遇や人権の面でしばしば問題が発生しています。

その中のある小さな町工場で働いていた中国人研修生がこんなことを言っていました。

「中国で募集していた時は、残業代込みで月収30万円も可能、みたいに聞いていたから来たのに、実際に来てみたら残業ゼロ、家賃・光熱費・食事代などが給料から引かれて、手元に残るのは7万円ぐらいしかない」

外国人実習生(研修生)は出稼ぎではないとか、人権侵害だとか、そういった問題提起をするつもりはありません。ただ、ある中国人から見て、日本の外国人実習制度はこう見えている、というだけのことです。

彼らから見ると、建前はどうあれ、7万円という手元に残る(中国に持って帰れる)金額が何よりも大事です。

7万円は、ざっと1元19円として換算すると、約3700元。

彼らにとって、日本で研修生として働くのも、広東省の町工場で働くのも、ほとんど変わらないことになります。

中国人実習生が急激に減少している

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ランチの席での話を聞きながらもう一つ思い出したのは、私の回りで中国人研修生が急激に減少していることでした。

町工場で働いている中国人研修生が帰国し、次にやってくるのが、インドネシア人研修生やフィリピン人研修生というパターンが増えてきました。

少し調べてみると、実際の数字にもそれが現れていることが分かりました。

外国人実習生 国籍別 年度別 人数 推移

出典:技能実習・研修に関するJITCO業務統計(表を一部編集しています)

中国人実習生は2012年を境に、毎年平均10%以上の割合で減少しています。2011年には約39000人の受け入れがあったのが、2014年には約27000人と、3年間で1万人以上も減少しているようです。

その代わりに増えているのが、ベトナム・フィリピン・インドネシア・タイなどからの研修生です。

私は実習生(研修生)を受け入れている経営者の方たちともお話する機会があるので、中国人研修生の側に問題があるケースも少なからず知っています。

性格が比較的温厚な、東南アジア圏からの外国人実習生に切り替えている、という側面もあるようです。

日本は既に中国人にとって魅力ある出稼ぎ先ではなくなっている

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ただ、日中両方の経営者、そして労働者の話を聞いたことを総合して感じたのは、中国人にとって日本は既に魅力のある出稼ぎ先ではないのだな、ということです。

言葉も通じず、友達もおらず、自由もなく、食事も口に合わない日本。

言葉が通じ、友達も作りやすく、遊ぶ場所にも困らず、故郷の料理を出す食堂もある広東省。

手取り給与がほとんど変わらないなら、どちらを選ぶか。自分の身に置き換えてみれば答えは明らかです。

本来、外国人実習生制度は出稼ぎ制度ではなく、発展途上国に技術を伝える制度なので、経済的に成熟しつつある中国からの実習生(特に単純労働がほとんどの『団体監理型』実習生)が減っているのは、当然の流れと言えばそうかもしれません。

それにしても、中国経済の衰退、人件費の高騰などが言われてはいますが、13.5億人の人口を抱えている中国は、世界の工場としてこれからも重要な役割を果たしていくはず。

これまでのような労働集約型の家内制手工業方式ではなく、より技術を高め、付加価値の高い製品の製造にシフトしていこう、という社長さんたちの心意気を感じた工場見学と昼食会でした。

-中国出張, 季節の風景

この記事を書いた人

C-STUDY管理人。フリーランスのプログラマー+中国語通訳翻訳+ブロガーをやってます。中国語は独学でHSK8級+中検準1級。中国・中華圏を中心に東アジア~東南アジアが活動範囲です。もっと詳しく

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